はじめに

 弦楽器との付き合い方は、「人」と同じです。全ての楽器には長所と短所があり、その長所を伸ばすのも、短所を和らげてあげるのも本人次第です。例え同じ楽器であっても、その楽器を理解して愛情を持って接している人には、良い音色が返ってくるでしょう。しかし楽器に対して不信感を持っている人には、決して良い音色は返ってきません。
 短所の無い楽器はありません。一方、長所の無い楽器もありません。従って、長所に惚れ込み、そして短所と上手に付き合う事こそが、楽器との正しい付き合い方なのです。これはまさに人との付き合い方と同じです。
 また、楽器を購入するということは、「結婚」に例えることができます。結婚とはゴールではなく、あくまでもスタートでしかないのです。弦楽器でも全く同じで、大切でそして難しいのは楽器の購入後です。相手に何を求めるかではなく、自分が相手にどれだけ近づくかが大切です。そしてお互いの長所を伸ばし合えたら、どんなに素晴らしい事でしょうか。
 楽器はパートナーです。この本がそんな楽器への理解を深めることにお役に立てることを願っております。

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

「弦楽器のしくみとメンテナンス」
佐々木朗著、音楽之友社出版
価格:\1,800+税