ニカワの種類と特徴

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

 ヴァイオリン製作・修理において使うニカワの種類は数多く、さらにその使用方法(溶かす濃さ、温度、塗布方法、圧着方法、乾燥時間)などによっても結果は異なってきます。そしてそのノウハウが「技術」といえるのです。

 今回はいくつかのニカワの写真を掲載して簡単な説明をします。

 この写真は数多くあるニカワの種類のほんの一部です。形状も写真の「粒ニカワ」、「粉ニカワ」、「板ニカワ」の他に「棒ニカワ」もあります。

骨ニカワ
 あくまで写真中の骨ニカワについてですが、この骨ニカワはヨーロッパでは一番ポピュラーなニカワだと思います。値段も安く、接着力も強くて使いやすいのです。一般的に「ニカワ」と言った場合にはこのニカワと思っても良いでしょう。
 しかしこのニカワは日本ではベストとは言えません。梅雨時に湿度の高い日本では腐りやすいのです。ヨーロッパで作られた楽器(新古を問わず)が日本においてトラブルが多いという理由に、この事も含まれています。
皮ニカワ(日本画用)
 私が長年愛用しているニカワです。これは師匠の無量塔藏六氏(東京ヴァイオリン製作学校)から教わったニカワです。もちろん日本画用のニカワも色々ありますから、この場でどのニカワが良いかということは言えませんが、慣れた人ならば色を見るとその特徴は判るでしょう。臭いが少ないのです。
 このニカワはヨーロッパで一般的な骨ニカワよりも接着力は劣りますが、日本の風土において腐りにくく、結果的に接着力を保ちます。
魚ニカワ
 これは高級ニカワとして有名です。魚(チョウザメ?)から作るニカワで、接着力が高く、また耐水性も高いために過酷な接着力を要求するような箇所の修理などにおいて用いることが多いです。