マイスターのQ&A

2018年12月4日 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:弓の毛が切れたときには、どのような処理をしたらよいのですか?

A: 使っている内に何らかの原因で弓の毛が1~2本切れてしまうことはよくあることです。しかしその切れた馬毛の処理を間違えてしまうと、さらに多くの毛が抜けてしまう可能性もあります。

 

切れた馬毛の処理方法による悪影響

 イラストの上図のように、馬毛は糸によって固くしっかり束ねられています。馬毛が切れてしまった場合、本来なら馬毛をニッパなどを使って丁寧に切る(イラスト中図)のが正しい処理です。こうすることで、馬毛を束ねていた糸が緩まないのです。しかし、慌てて馬毛を引き抜いてしまうと、場合によっては馬毛が途中で切れずに、束ねている根元から引き抜かれてしまう可能性もあります。こうなると、本来ならばキツく束ねている糸が緩んでしまって、馬毛が次から次へと抜けてくるのです。

 

 

時間に余裕があるときの、切れた馬毛の処理

 練習中に馬毛が切れてしまったとか、時間に余裕があるときには下写真のような小型ニッパや、または精密ニッパを使って馬毛を切るのが理想的です。ニッパを使うと、他の馬毛に傷を付けずに、根元から綺麗に切ることができるからです。
 補足になりますが、ハサミを使って切る方法でも悪くはないのですが、切れた馬毛をハサミで切ろうとすると、意外と根元から切ることが出来ずに、根元から切ろうとすると他の馬毛まで傷つけてしまいやすいのです。他の馬毛に触れずに、丁寧に切ることが出来るのでしたら、裁縫糸切りバサミみたいなのを使うのもありかもしれません。

この小型ニッパはケースの中にしまっておくのに、邪魔にならないサイズです。

 

演奏中などで時間の余裕がないときの処理

 演奏中に馬毛が切れてしまった時には、ニッパを取り出して切る事はできません。そのようなときには手で引きちぎるしかないのですが、その時のコツは、できるだけ切れた馬毛を根元まで引き出して、直角方向に引きちぎることが重要です。こうすることで、毛が縛っている束ね糸から抜けないで、ニッパで切るような位置から「切る」ことができるからです。

 

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