マイスターのQ&A
ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
Q:肩当てのスポンジ部分がツルツルになってしまいましが、交換可能ですか?
A:肩当ての脚のゴムチューブの劣化に関しては、多くの方が意識しています。なぜならば、楽器に装着するときに毎回脚ゴムの部分を見たり、触ったりするからです。しかし肩当てのスポンジ部分に関しては意外にも無頓着です。ご自分の肩当てをよく見るとわかると思いますが、この部分は想像以上に傷みやすいのです。
- 肩当てのスポンジ部分の劣化
- 演奏者の癖にもよりますが、肩当てのスポンジ部分は毎回の演奏時に相当な摩擦が生じるようです。そして購入後1〜2年も経つと、スポンジは摩耗してツルツルになっています。こうなるとスポンジの摩擦係数が落ちてしまい肩当てがずれ落ちやすくなってしまうのです。肩当て購入直後には調子が良かったのに、最近肩当てがずれ落ちやすくなったと感じる方は、この部分もチェックしてみてください。
- スポンジ部分が劣化した場合の対処方法
- 肩当てのスポンジ部分が摩耗してツルツルになってしまった場合の対処方法は2つです。思い切って新しいのに交換するか、またはご自分で修理するかです。修理の手間と新品肩当ての値段を考えると、新しい肩当てに交換する方が無難と言えるかもしれません。肩当ては「消耗品」なのです。ただし、今回は修理の方法に関して書いてみましょう。時々、ツルツルに劣化した肩当てに、輪ゴムをぐるぐる巻き付けている人がいますが、あれはお洒落ではありません。また輪ゴムがすぐに劣化してしまうのです。
さて、交換部品としてのスポンジは販売されていませんので、修理する場合には自分で素材を用意しなければなりません。今回利用するのは最近DIYショップなどでよく見かける「滑り止めシート」です。このシートを肩当てのスポンジよりも少し大きめに切り取り接着するのです。重要なのは接着剤です。必ず「発泡スチロール用」を使ってください。そうしないと貼り付けたシートがジュクジュクと溶けてしまうのです。
利用した滑り止めシートはとても軽いので、この方法で修理した肩当てはほとんど音質の劣化がありません(もちろん無いわけではありませんが)。以前にウレタンゴムシートを貼り付けて同様な事を行った事がありますが、その場合には肩当ての質量がかなり大きくなってしまったのです。
この滑り止めシートの耐摩耗性に関しては未確認です。後日発表したいと思います。もっとも劣化したらまた張り替えればよいので、そこまで大げさに考える必要はないでしょう。
追加情報(訂正)
上で「発泡スチロール用を使ってください」と書きましたが、その後これで接着したものが取れてしまうという事がわかりました。接着力が弱すぎたようです。従って、注意しながら一般の接着剤(「セメダイン」とか)を使って接着してみてください。
戻る