マイスターのQ&A
ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
Q:チェロ・ソフトケースのファスナー位置で、性能差はあるのですか?
A:チェロのソフトケースにはいくつかの種類があります。もちろん、ケースの材質、構造などによっての性能差が一番大きいのですが、ご質問の「ファスナー位置」だけでも性能の差はあるのです。
- ファスナー位置
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チェロのソフトケースには、ファスナーの付いている位置で比較した場合、2種類が存在します。「前開きタイプ」と「横開きタイプ」です。
「前開きタイプ」とはファスナーがチェロの弦の上に付いているタイプです。このタイプはソフトケースの中央部分を観音開きに開けて、楽器の出し入れをするタイプです。一方、「横開きタイプ」とはチェロの横板(側板)右部分にファスナーが付いているタイプです。このタイプのケースは、ケースの前面を持ち上げて、横から楽器を出し入れすることになります。
- それぞれの特徴
- 同じメーカーで同質の素材で作られたソフトケースの場合、一般的に前開きタイプの方がわずかに高価なようです。従って、初心者、または学生の方などには「少しでも安く」ということで、横開きタイプを選んでいる方が多いのです。しかし、注意が必要です。というのは、横開きタイプは保護面で不利だからです。
ソフトケースに楽器を入れていて、ぶつけてしまいがちなのは楽器の「横板」部分です。また、この部分はわずか2mmにも満たない厚みの板でしかないのです。このために、ソフトケースに入れたままぶつけてしまったために、ここが割れてしまうトラブルは多いです。
前開きタイプの場合、横板部分にはクッションが入っていますので、完璧とまではいきませんが保護性能はある程度高いのです。しかし横開きタイプの場合には、ファスナーの部分には全くクッションは入っていません。従って、この部分をぶつけてしまうと、どうしても損傷を受けてしまいやすいのです。
また、ファスナーが横板に接触してしまい、横板に傷が付いてしまうトラブルも時々見かけます。
これまで前開きタイプと横開きタイプの違いについて特に意識していなかった方は、横開きタイプのファスナーの上から中に収まっている楽器を触ってみてください。その部分の保護性能の低さにびっくりすることでしょう。
前開きタイプと横開きタイプの価格差はわずかです。上記のような性能の違いを考えれば、前開きタイプのソフトケースを選ぶことが良いと言えるでしょう。また、楽器の出し入れのしやすさも、前開きタイプの方が便利だからです。
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