マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:袋入りの弦と、真っ直ぐにして売っている弦で違いはあるのですか?

A:ほとんどの方は、この違いは「ガット弦」か「ナイロン・スチール弦」かの違いと理解しているようです。すなわち、ガット弦は真っ直ぐな状態で販売され、ナイロン弦やスチール弦は袋入りで販売されていると理解されているのです。もっとも、これは間違いではありません。しかし実際には、ガット弦でも袋入りのものは存在しますし、またドミナントなどのナイロン弦でも真っ直ぐな状態で売られていることもあるのです。

真っ直ぐな弦と袋入り弦との違いはあるのか
 両者によって、製品自体の違いはありません。しかしその保存状態という意味において、性能的には微妙な差が出ることも確かです。
 例えば、ガット弦の場合には芯材が天然のガットですから、どうしても不均一なのです。このような不均一なガットを丸めて袋入りの状態を続けることによって、ある一部分にストレスがかかることは十分に考えられることです。すなわち、きれやすくなってしまうかもしれないのです。このような理由から、天然のガット弦の場合には、多くの場合に真っ直ぐな状態で保存され、販売もされます。
 もっとも、ナイロンガット弦においても、袋入りでなく真っ直ぐな状態で保管、販売された方が、弦にとっては理想的です。このような意味で、ナイロンガット弦でもあえて袋入りでないタイプを求める人もいるのです。また、袋入り弦を購入した直後に袋から出してしまい、ケース内の弦ケースに入れ直してしまう人もいます。
 但し、このような真っ直ぐな弦の場合、袋入りでないために販売形態が複雑になったり、または保管、管理が面倒になったりのデメリットもあることは確かです。

 このように、多くの弦には「真っ直ぐのタイプ」と「袋入りタイプ」があると思ってもよいのですが、実用的な意味では、「ガット弦は真っ直ぐ、ナイロン・スチール弦は袋入り」というように考えていてもよいでしょう。

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