赤外線仕様デジタルカメラでの撮影
2004.9.21 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
前回はノーマル仕様の一眼レフデジタルカメラで、赤外線撮影を試みたレポートを書きました。詳しくはこちらを見てください。結論としては、十分に利用できるというものでした。
しかし、より写りの良い撮影を求めて「デジタルカメラでの赤外線撮影」について色々と調べていたところ、アマチュア天文撮影者の中にはデジカメの赤外線カットフィルタを取り去って、赤外線領域の天体を撮影しているという情報を得ました。そしてさらに詳しく調べたところ、EOS
Kiss-Digitalの改造を行っている方にたどり着きました。
その方は天体撮影関係者の中では有名な瀬尾さんという方です。趣味としての天体撮影を行っているのですが、ご自分で機材の加工も行ってしまう方なのです。その方がEOS
Kiss-Digitalの赤外線改造を行っていると情報を得たのです。そこで早速、「EOS Kiss-Digital改造」を瀬尾さんにメールを書いて、改造をお願いしました。
- EOS Kiss-Digital赤外線改造
- 技術的、構造的な詳しいは内容は上記の瀬尾さんのHPに書かれていますのでそちらを見てください。簡単に書くと、カメラのCMOSセンサーの手前に装着されている赤外線カットフィルタを取り外し、それに変わって赤外線も通す疑似フィルタを自作して入れるらしいです。言葉で書くと簡単なのですが、この写真で見る以上に高度な改造技術を必要としますので、私は自分では行わずに瀬尾さんに頼むことにしました。もちろん、改造してしまう以上、メーカーの保証は一切受けられないという自己責任の下でお願いしました。
改造料金は私が行ったときには、「Kiss-Digital改造費用」が\38,000でした。ちなみに下写真の左側のフィルタは、改造した赤外線仕様のKiss-Digitalで普通の撮影を行うための赤外線カットフィルタ(KissDigital専用Lフィルター¥21,000)です。
- EOS Kiss-Digital赤外線改造モデルとノーマルのEOS 10Dの比較
- さて前回同様に、リモコンから出る赤外線を撮影してみました。最初は前回のレポートの時に使用したEOS
10Dです。このデジカメは一切改造していませんが、それでもリモコンから出る赤外線を写し取っています。
次はKiss-Digital赤外線改造モデルで撮影してみました(下写真)。赤外線カットフィルタを外したせいなのか、ノーマル状態のデジカメよりも感度が高くなっているので、上写真よりもシャッタースピードをかなり速くして撮影しました(感度が高いのは好都合です)。
結果は、明らかに赤外線の撮影能力が上がっています。今回の改造デジカメを購入する前は、上写真くらいの赤外線撮影能力があれば十分とも考えていましたが、下写真を見てしまうと内蔵されている「赤外線カットフィルタ」の悪影響(?)を実感します。「赤外線撮影専用デジカメ」の面目躍如と言ったところでしょうか。
- 実際の撮影
- 最初は普段通りの撮影を行ったのが下の写真です。このヴァイオリンは18世紀後期の楽器で、多くの修理が施されているのですが通常の撮影では(または目で見ただけでは)よく判別することはできません。
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次の写真は今回導入した「赤外線改造デジカメ」で撮影したものです。赤外線は波長が長いために、ニスの層を通り越し、木の割れ(修理箇所)の状態をはっきり写し出すことが出来ています。この写真はWeb用に縮小しているので詳細はわかりませんが、実際の画像からはこり詳細な情報を得ることが出来ます。
ちなみに撮影は、赤外線改造Kiss-D(赤外線カットフィルタを除去)+可視光カットフィルタで撮影しています。可視光帯域が除去された、赤外線のみの画像のため、色の付いていない白黒の画像になっています。
この楽器は18世紀後半の楽器であるにもかかわらず、割れの少ないとても健康的な楽器であるという事がこの写真からもうかがい知ることができるのです。
- まとめ
- これまでに数回にわたってレポートしてきたことをまとめると、「ブラックライトを利用した紫外線撮影=ニスの状態」を調べることができ、一方、「赤外線撮影=見えないラベルの撮影や、木の割れの状態」を調べることができるということがはっきりしました。
追加 「デジタルカメラによる赤外線撮影 その3」
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