作業ライトとしてのLEDの考察

2009年12月2日 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

 作業用のアームライトにはクリアタイプのタングステン電球を使います。これは影をはっきりと出して、加工面の凹凸を確認するためです(詳しくは私のHPの「技術関連レポート 44.作業用電球(タングステン電球)の種類と使い分け」を読んでください)。私は以前、電球タイプの蛍光灯が出たときにも真っ先に、その蛍光灯電球が作業ライトに使えないものかと試しました。しかし「作業面への影の質」の問題で使い物にならなかったのです。そのように作業ライトとしては素晴らしいクリアタイプのタングステン電球ですが、将来は環境面の関連で発売禁止になるかもしれません。一切発売されなくなるのか、それとも業務用として入手可能になるのかは現時点ではわかりませんが、いずれにせよ特殊な電球となることでしょう。

電球タイプのLED
 2009年12月現在、LEDの進歩は日進月歩です。2年前には考えられなかったような明るさと、そして何よりも演色性が格段に良くなっているのです。最近電球タイプのLEDも各社から発売になったので、作業ライトに応用できないものか、実験してみました。明るさ、演色性は(ほぼ)申し分ありません。若干重いのですが(重すぎると、アームライトのアームが下がってしまいます)、それも許容範囲です。価格が4~7,000円もしてしまうのも欠点ですが、それはじきにもう少しは下がることでしょう。

クリア電球とLED電球

東芝LED 「E-COREシリーズ 白色8.7W(100W電球相当)」

 

LED電球の影
 影の出方は、光源の面積で決まります。面積が小さいほど、点であるほど、はっきりくっきりした影が出ます。一方、通常の電球のようにマットタイプのガラスで発光面が大きいと、影がぼやけてしまします。逆のことも言えて、影をぼかして優しい光にするために、あえて光源にマットタイプのガラスを被せているのです。

クリア電球の影

LED電球の影

 蛍光灯電球ほどではありませんが、クリアタイプのタングステン電球と比べてLED電球の方が影がぼやけているのがわかります。これはLED電球のマットカバー(プラスティック)で光が拡散されているからです。このままでは作業用ライトとしては使いにくいです。

LEDの加工
 LED電球で影をはっきり出すためには、「クリアタイプのLED電球」を購入すればよいのです。しかし現時点ではそのようなLED電球はありません。そこで、マット面の保護カバーを取り去ってみました。

LEDの加工

 光拡散用のマットカバーを切り取り、光源(黄色の部分)が直接見えるようにしました。こうすることで光源をより点光源に近づけることができるわけです。

加工LED電球の影

加工LED電球の影

 マットの保護カバーを取り外したことによって、明らかに影がはっきりしました。これでLED電球も作業ライトとして使えることが証明できました。タングステン電球の消費電力は100W(60Wの電球を使うこともあります)で火傷するくらい熱くなるのですが、LED電球は高輝度タイプでもわずか8.7Wです。これで来たるべくエコ社会にも、作業性能を妥協せずに十分対応できます。熱の出方は、タングステン電球とでは比べものにならないほど差があります。


まだ短期間ではありますがこのLED電球を使ってみた感想を書きます。
 
 
 
メリット
・100Wのタングステン電球だと作業中に手や腕が焼けそうになるくらいに熱いのですが(影を調整するために、ライトをかなり近づけるからです)、LED電球はそんなことは全くありません。
・節電効果は大きいと思います。
・光の色が蛍光灯とおなじ「白色」なので(実測約5,200K)、写真撮影やビデオ撮影の時のライティング調整がとても楽になりました。
・影のシャープさは、これまで使っていたクリア電球よりもシャープかもしれません。
 
デメリット
・これまでは楽器修理などのニカワ接着時に、事前に接着部に白熱電球を近づけておいて、接着部分だけをほんのりと暖めることができたのですが、このテクニックが使えなくなってしまいました。
・LED電球の価格。
・欲を言えば演色性がもう一つ。

 

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